犬のふり日記

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おもしろかった本 2016

2016年もそろそろ終わり。今年もたくさん本が読めてよかった。いろいろ読んだなかで、心の針が振れたり、これは、と思った本を紹介したいと思います。

 

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荻原魚雷「借家と古本」

いきなりちょっとマニアックな本の紹介からですが、私が今年もっとも読み返した本がこれなのです。

苦しいとき、落ち込んだときはたいてい魚雷さんの文章を読んで元気をもらっています。

読んでいると自然に身体の力が抜けていくような感じがするのです。

 

一日中部屋に閉じこもって布団の中でゴロゴロと本なんか読むような生活をしている。

それはそれでときどき情けない気分になる。

なにもしていないと不安とかやきもちとか恨みつらみといったマイナスな感情におそわれやすく、気持もうまくきりかえられない。だからひたすら本を読むことで現実逃避。でもこうした無為の日々は決して悪くないとおもう。別に世の中の変化についていかなくてもどうにかなる。「まあ、人は人」というひらきなおりは、現代人にとって大事な能力ではないかとおもうのである。

(蛇行と直行)

 

清野とおる「そのおこだわり、俺にもくれよ」

漫画です。作者の清野さんは赤羽を舞台にした「東京都北区赤羽」で有名な漫画家さんですが、この「おこだわり」漫画はそれを超えるくらいの勢いで傑作でした…

 

酔狂市街戦

酔狂市街戦

 

戌井昭人「酔狂市街戦」

愛すべき駄目人間という感じで、だらしないんだけど憎めないキャラクターがたくさんでてきます。戌井さんは新作出るたびに必ずチェックしてます。

 

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

 

ガルシア・マルケス「予告された殺人の記録」

ノーベル文学賞受賞。マルケスを初めて読むならこれが薄くておすすめ。もっと堅苦しいのかと思ったけど、ユーモラスな文章で死に際のラストとか最高だった。

 

ぢるぢる旅行記 (総集編)

ぢるぢる旅行記 (総集編)

 

ねこぢる「ぢるぢる旅行記」

いつかインドに行きたいなと思ってて、とりあえずインド関係の本でも読むかあ、と軽い気持ちで手に取ったのがこれ。マリファナ入りヨーグルトドリンクでぶっ飛んだり、ニセモノのガネーシャ像つかまされたり…結果的にこれ読んだらインド行ったような気になってしまって、めっちゃコスパ良いなと思いました。

 

報われない人間は永遠に報われない

報われない人間は永遠に報われない

 

李龍徳「報われない人間は永遠に報われない」

デビュー作の「死にたくなったら電話して」が自分の中の狭いスポットにクリーンヒットしたので、こちらも読んでみた。「死にたくなったら〜」ほどの激しさはないものの、この作家にしか描けない世界だな、と感じました。

 

 いましろたかし「引き潮」

帯文を坂本慎太郎が書いていたので、気になってネットのフリマアプリで購入。一つ一つの話は短いのだけど全部心にズシンとくる。といっても、重いことが描かれているわけじゃなくて、行間から漂う悲哀と、独特の間と、突き放すような終わり方が逆に余韻になって…説明が難しい(笑)

 

 

20代で隠居 週休5日の快適生活

20代で隠居 週休5日の快適生活

 

大原扁理「20代で隠居」

「隠居」って仙人みたいでかっこいいな、と前から思っていたのでアマゾンで偶然見つけたとき、なんとなくポチりました。隠居っていっても、なんか修行僧みたいな厳しい感じじゃなくて、自分の感覚を大事にしていこうみたいな本で、「こんな生き方があるんだ」って、すごい気がラクになりました。

 

 

来年も面白い本に出会えますように。

町田康さんと本を読む③

 

では次にあみ子の兄を見ていきます。

あみ子の兄は「不良以前」と「不良以後」という区切りがあります。

「不良以前」の兄は、壊れかける家族をなんとか成立させようと頑張っているようにもみえます。ひとつ前の記事で引用した、あみ子が家族の写真を撮ろうとする場面でも、なんとか全体の家族感を出そうと、おどけて変顔を保ったまま、両手でピースサインをしたりします。

しかし継母や父はあみ子を厄介者のようにして扱っています。

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町田康さんと本を読む②

町田さんがピックアップしたのは、まず冒頭(書き出し)の部分です。

 

p9  

    スコップと丸めたビニール袋を手に持って、あみ子は勝手口の戸を開けた。ここ何日かは深夜に雨が降ることが多かった。雨が降った翌日は、足の裏を地面から引きはがすようにしてあるかなければならないほどぬかるみがひどかった表の庭に通じる道も、昨日丸一日の快晴のおかげで今朝は突っかけたサンダルがなんの抵抗も受けずに前へと進む。サンダルの縁にへばりついた泥が灰色に乾いて固まっているのが目にとまり、すみれを採ったらついでに外の水道でこのサンダルを洗うことにした。庇がついた軒先を通り過ぎ、家の裏手の畑へと続くなだらかで短い坂を上る途中、脇に植えられた一株のつつじが満開の白い花を咲かせているのに気がついた。

 

この冒頭の部分を町田さんは素晴らしいと絶賛していました。

私が読むと「あみ子が家から庭に出て、そこから家の裏の畑へと歩いて行くのだな」くらいのことしか単純に頭に浮かばないのですが、この冒頭8行の中に「これから作者が描こうとしている世界」が立ち現われているのだそうです。また、この中では非常に多くの情報を読み手に送っており、これだけのことを説明するのにはプロの作家でもこの4倍の文章量が必要、とおっしゃっていました。

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町田康さんと本を読む

12月4日、神奈川県の大磯にあるカフェ「magnet」で開かれた「第2回 町田康さんと本を読む」にいってきました。

11月1日から参加予約が開始されていたのですが、2日の時点で満席となっていたようで、参加できなかった人もいると思いますので、自分が行ってきた感想をこちらでまとめられればと思い、書きます。
課題図書は今村夏子作「こちらあみ子」でした。この本は以前に読んだことがあったのですが、読書会の前にもう一度読み返しました。
今村夏子という作家さんは、最近アメトーーク読書芸人の会でも「あひる」という作品が芸人の又吉さんなどから紹介されていた作家さんです。
 
大磯までは片道2時間くらいでしたが、電車のなかでずっと「こちらあみ子」を読んでいました。この作品を町田康さんがどんな風に料理してくれるのか、わくわくしながら読んでいました。
 
そして、読書会の会場についたのですが、なんだか参加者の方達がみんな賢そうに見えて、急に恥ずかしくなってしまいました。その中で一際存在感を放っている方が前に座っていて、何者かと思いましてそちらに視線を向けると、そこに町田康さんがすわっていました。「えっ!もうそこにいるのか…」私は町田さんは時間になったら奥のほうとかから登場すると思ってたので、すでに会場の中に普通にいるのにかなりビビりました。そのあと何度か顔をチラチラと4度見くらいしてしまいましたが、めちゃくちゃカッコ良かったです。
 
そんな感じで時間になって始まった読書会ですが、町田さんは本の内容に入る前に「意味」のことについて話してくれました。
 
ヒトは意味を求めがちだけども、意味を求めてヒトは生きているわけではない。たとえば10年前に訪れた場所を急に今、ふと思い出したりする。そのこと自体に意味はないが、そんな風にして、過去の自分の経験とリンクして、たとえば文章を読んでいたら、ふと昔見たことがある風景が浮かんでくるとか、そういう風に小説が読めると良いと思う。
 
みたいなことを言っていたと思います…
ごめんなさい、自分の理解力がなさすぎていまいちうまく説明できませんorz...
まあそんな感じのことを言っていました笑
 
それでいよいよ「こちらあみ子」の中身に話が移っていきます。
ここからは小説の内容についての話が中心になるので、読んでない方は読んだ後記事に目を通したほうがわかりやすいかもしれません。
 

 

こちらあみ子 (ちくま文庫)

こちらあみ子 (ちくま文庫)

 

 

続きます…。